スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 | スポンサー広告 | page top↑
#170 秋の『加須良』
~秋の『加須良』~




豪雪の辺境の地で、寄り添うようにして長い歴史を刻んできた二つの集落『桂(かつら)』(富山県旧上平村)と『加須良(かずら)』(岐阜県白川村)、ともに地図から姿を消して約40年という、今は無き合掌造りの集落である。

前回にも書いたが、幸いにもこの二つの集落はいずれも村在りし頃の写真をネットや写真集などで目にすることができ、当時の美しい風景を今も感じることができる。中でも秋の紅葉の頃の写真は実に印象的だ。そういう写真を見ると、どうしてもその地を訪れてみたくなって我慢できなくなるのは、もはや私にとっては性のようなものなのかもしれない。残念ながら『桂』はダム湖の底だが、『加須良』ならまだ集落在りし頃の面影を感じることができる。以前当サイトの掲示板で、桂から加須良へつながる林道の情報をいただき、その直後(春)と夏に二度現地に訪れてみたが、その時から「何とかして秋の加須良も見てみたい」という思いを強く感じていた。

過去二度の訪問時は、いずれも『加須良』へと向かう林道にチェーンはかかっておらず車による移動が可能だった。しかし今回はしっかりとチェーンがかかっており、峠越えの林道を歩いていくこととなった。その昔、二つの村はお互いに何かあると峠越えの道を行き来して助け合っていたというが、今の両村を結ぶ峠道は昔のそれとは違っているので、当時の雰囲気をそのまま味わえるわけではない。それでもこうしてゆっくり歩きながら峠を越えると、少しでも当時の人たちに近づいた気分になったりする。林道途中からの集落を見下ろす風景は、村なき今は当然ながら見ることはできない。それでも周囲の山の景色などを見ながら歩いていると、「写真で見た地に来たなぁ」ということを感じたりもする。この日、『桂』から林道を少し行ったところを振り返ると、かつての桂集落の跡が、水位を下げたダム湖から一部姿を見せていた。今は石垣が見えるだけだが、その昔はここから美しい桂集落の合掌家屋やそこに生活する人々の姿、分校の子どもたちの声などの生活の温もりが感じられたはずだ。「桂分校はどの辺にあったのだろう」など考えてもみるが、今水面から見えている『桂』はほんの一部、ただ湖の水に遮られるだけである。

林道の木々は紅葉の雰囲気を作ってはいるが、まだ少し時期が早いのか遅いのか「秋真っ盛りの紅葉」というイメージは薄い。それでも所々に真っ赤に色づいた木々の葉が見られる。それらを味わいながら歩くと程なくして峠に着く。峠といっても見晴らしが良いわけではなく、何か標示があるわけでもない。そのまま愛想の無い峠を下ってゆくと木々の間から眼下に加須良川が見えてくる。このあたりに『加須良』集落や田畑が美しく広がっていたはずだとイメージが膨らむ。『桂』と違ってここは水に沈んでいないぶん、当時の写真とイメージをだぶらせやすかったりする。

さらにしばらく下ると『加須良』集落跡に着く。明るくひらけていた村の道は、周囲の木々が伸びたせいで、今はこの時期でも薄暗い。家屋の跡に石垣や水路のコンクリート跡などを見ることができるものの、ここも何十年という年月で伸びた木々の枝葉が空を覆い隠すため、昼なお薄暗い状態となっている。川の上流に向かって一本道がのび、その両側に堂々とした合掌家屋、そして一点投視法の先に見える特徴的な形の山。そういった『加須良』のシンボルともいえるような景色はここではもう見ることができず、「家屋が無くてもせめて道と山の風景を」という願いも、のびきった木々に遮られてしまうことになる。

それなら、ということで河原に下りてみた。河原には大雨時に土砂とともに流れ着いたであろう木々が不自然な形で立っていたり、そこに根を下ろしてのびていたりはするが、先の集落跡に比べると遥かに開放的で、村のあった頃の山の見える風景を思い出させてくれる。川向こうの山はかなり紅葉が進んで山肌はオレンジ色。そしてそれが秋の青空、清流の音とともに今の加須良の秋の風景を作り出している。写真で見た田畑の広がる風景は見れないものの、ここは写真で見た風景とつながる秋の加須良の風景だということを実感する。河原に腰を下ろし周囲の風景を眺めていると、写真で見た昔日の村の風景が次々と浮かび、谷に響く村の人たちの声までが聞こえてくるような気がしてくる。

間もなく厳しい冬がやってくる。そうすると真っ白な雪が全てを覆いかくしてしまうだろう。この地で人々が懸命に雪と戦ったのはもう昔の話。雪下ろしの男たちの声が響き、深い雪からほじくられるようにして合掌家屋の屋根が顔を出していたのも、もう遠い記憶の中だけのこと。今、この『加須良』はわずかに村の記憶を残しながら、ただ静かに自然に身を任せるだけなのである。









http://www.geocities.jp/kondodoraibuiko_ne021/index.html
スポンサーサイト
【2008/11/16 20:55】 | 岐阜県山村・廃村・自然 | page top↑
#169 『桂(越中桂)』を感じる
~『桂(越中桂)』を感じる~


合掌造りの集落『桂(かつら)』(富山県南栃市/旧上平村)は、富山と岐阜の県境の山深い辺境の地に存在した集落で、現在は境川ダム湖(桂湖)の底に沈む。そしてそこから山道を歩いて30分ほどの峠の向こうにあったのが、同じく合掌造りの『加須良(かずら)』(岐阜県大野郡白川村)集落。ともに戸数6~8戸という小さな集落。この辺境の地の二つの小さな集落は、冬場になると想像を絶する豪雪に見舞われ、周囲とは完全に隔絶されてしまう。また冬場でなくても、その険しい地理的条件のため、近年になって林道が通じるまで周囲とつながりを持つのは容易ではなかったという、まさに陸の孤島というべき秘境である。

そうした中でこの二つの村は長い歴史の間お互いに助け合い、肩を寄せ合うかのようにして支えあって運命を共にしてきた。その『加須良』が集団離村で廃村となったのが昭和43年のこと。そして支えあった一方を失った『桂』も、2年後の昭和45年に離村の道を選ぶ。この二つの村は「かつら」「かずら」というようによく似た音。その為それぞれを『越中桂(えっちゅうかつら)』『飛騨加須良(ひだかずら)』と呼ばれることも少なくない。ともに生活の温もりが消えてから40年もの年月が過ぎているにもかかわらず、ネット検索でこの二つの集落が多くのヒット数を得ることからすると、人々の注目度も決して低くはないのかもしれない。

先日、ダム底に沈む『桂』地区周辺を訪れた。この『桂』はダムに沈んだといっても、通常よくある「ダム計画~立ち退き~廃村~水没」というのではない。ダム計画が持ち上がったのはすでに人々が去った離村後のこと。したがって、桂集落跡がダムに沈んだと言った方が正しいのかもしれない。とはいえ、元の住民の人たちの故郷の地への思いが薄まったり消えたりするはずは無いはず。ご先祖様が眠る歴史ある地を二度と踏めなくなってしまう哀しさや無念さは、決して変わることはないだろう。

『桂』が湖底に眠る境川ダム湖(桂湖)、秋晴れのこの日は実にのどかで静かな風景を見せてくれていた。訪れる人は決して多くはないが、ダム湖見物や紅葉をめざして写真撮影に訪れる人たちの姿は時折見かけることができる。広々とした奥のキャンプ場には、カヌー遊びなどでのんびりとすごす人たちの姿。ダム湖の最奥まで行くと境川を渡る橋があり、そこからは峠越えの林道が続き『加須良』へと至る。その橋から『桂』集落があったあたりの湖面を見る。すると下がった水位のせいか、湖斜面に何か石垣らしきものが見える。以前訪れた時はダム湖の水量も多く集落の面影は全く感じることができなかったが、この日は幸いにも水位が下がっており、『桂』在りし日の面影を少しだけ見せてくれていたのだった。もちろん建物などが残っているはずは無い。残っているのは整然と積まれた石垣と、それによってきれいにしきられた合掌家屋があったと思われる跡だけ。それでも当時の写真とオーバーラップさせながら、石垣や周囲の山の風景を見ると、当時の姿が十分イメージできるのである。

ご存知の方も多いかと思うが、この『桂』そして『加須良』の合掌造り集落は何とも言えない独特の美しさを持った、まさに桃源郷と呼ぶにふさわしいような雰囲気を持っている。険しい山道を延々と歩いた後に、もしこのような景色が目の前に開けたとしたら本当に感動的だろう。清流の流れる、わずかに拓けた谷あいに堂々とした合掌家屋。美しさ以上に威厳のようなものを感じるのは、その歴史の長さと自然環境の厳しさを乗り越えてきた内に秘めた力強さのせいだろう。ネット検索をすると離村前の写真なども見ることができるので、当時の写真をご覧になったことの無い方は一度ぜひご覧になっていただければと思う。

今、戦後から昭和30~40年代の頃の生活や風景などの写真を見て心癒される人が少なくないという。何に心を動かされるのだろうか。「昔はよかった」という懐古趣味もあるだろうが、それだけでは心動かされることは無いはず。そこに何を見ているのだろうか、それを自分自身に問いかけてみることも面白いのかもしれない。








http://www.geocities.jp/kondodoraibuiko_ne021/index.html
【2008/11/08 03:46】 | 富山県山村・廃村・自然 | page top↑
| ホーム |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。