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#158 『赤谷』と『森茂』
~『赤谷』と『森茂』~

久しぶりに御母衣湖周辺林道を訪れた。‘御母衣湖周辺林道’などと非常に曖昧に呼んでいるが、実は正式名がわからず私が勝手にそう呼んでいるだけのことなのだが‥。かつての岐阜県大野郡荘川村(現・高山市)の山村『六厩(むまい、むまや)』から北に向かって延びるこの林道、残念ながら『六厩』の起点からそう長くない所でゲートのある広場に行き着いて、一般車は通れなくなってしまう。しかしそんな短い林道でも秋になると実に美しい紅葉の風景を見せてくれるので、私の中では大変印象深い林道の一つとなっている。紅葉の季節には、一日中何もせず寝転んで思い切り秋を味わってみたくなる、そんな気にさせてくれる林道なのである。

この日は紅葉ではなく、真夏のエネルギッシュな緑の木々の葉が迎えてくれた。この夏最高ともいえるような暑さの中だったが、それらの木々の葉が林道を覆い、あたかも緑のトンネルという感じで日差しをさえぎってくれるため、「暑い!」という印象はそんなに受けない。また杉林のような薄暗い雰囲気も無い。車を降りてエンジンを切る。聞こえてくるのは蝉の声だけ。この静けさからは、ここらがかつては金山として多くの人々で賑わっていたことなど到底想像することはできない。今は蝉の鳴き声が聞こえるだけのこの谷も、その昔は屈強な工夫たちの荒々しい声が響き渡っていたのであろう。

林道はゲートのある広場から二手に分かれているが、いずれも鍵のあるゲートでふさがれており、車ではこれ以上進むことはできない。左側のゲートからは‘六厩赤谷林道’、右のゲートからは‘森茂六厩川林道’がそれぞれ延びており、それぞれのゲートにはその林道名が表示されている。この林道名にある『六厩』『赤谷』『森茂』はいずれも集落名であるのだが、『六厩』以外はどちらもすでに廃村となって久しい。今のこの静かな風景を見ながらそのことを思うと、人知れず静けさの中に消えゆくものの寂しさを感じざるを得ない。

『赤谷』は御母衣ダム建設のための水没集落。今から約40年前の昭和35年に完成した御母衣ダム建設では、この『赤谷』の他『中野』『岩瀬』『海上』の4つの集落が完全水没し、多くの人たち(1206人)が故郷を失くすこととなっている。一方『森茂』は、ダム建設による水没集落ではない。全戸離村したのも『赤谷』よりはるか後の昭和48年というから、ダム完成後15年も過ぎてからの離村だ。これだけを見ると『森茂』が廃村になったのはダム建設とは無関係のように思えるが、実際は二つは大いに関係している。

ダム建設時、『森茂』集落そのものは沈むことはなかったものの、この村と密接なつながりのあった集落や道がダム建設で水没し消えてしまっている。ともに生活の基盤を作っていた『森茂』より西側集落、それらは全て無くなり、道はダム湖によって寸断されてしまったのである。これは、生活のつながりをそれら集落や道に頼っていた集落の人たちにとっては大打撃である。それにより村はほとんど孤立状態となってしまい、生活は大いに変わってしまうこととなる。人々が村を去った理由はこれだけではない。何百年もにわたって村を守ってくれた山の原生林が根こそぎ伐採されてしまったことや、それによる山崩れや洪水などの災害の恐怖、大雪などの過酷な自然条件などの影響も大きかったという。運搬用の森林鉄道が作られていたというから、その伐採の規模の大きさはかなりのものだったのだろう。ちなみにそれらの森林は国有林だった為『森茂』の住民にとって得られるものは何も無く、ただ乱伐の後に生じる災害のみが残ったと言うことだったのだろう。このあたりについては、以前このコーナーで紹介させていただいた書「源流をたずねて3(岐阜新聞社出版/吉村朝之著)」に詳しく書かれているので、関心のある方はぜひご覧いただければと思う。

山村やその奥を訪れた時に様々な風景を目にする。気にかけなければそのまま見過ごしてしまうような風景の中でも、よく見るとそこから様々な歴史が見えてくることがある。そしてそこには多くの人々のドラマがあったこともよくわかる。単に昔を懐かしんだり、そこにもの悲しさを感じるというのも悪くはないのかもしれないが、そこから一歩踏み込んでみることで見えてくるさらなるもの、それらから今の時代に学ぶことの多さに驚くことも少なくないのである。



※参考資料「源流をたずねて3」(吉村朝之著/岐阜新聞社発行)










http://www.geocities.jp/kondodoraibuiko_ne021/index.html
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【2008/08/06 19:13】 | 岐阜県山村・廃村・自然 | page top↑
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