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#87 手記「土倉鉱山の思い出」
~手記「土倉鉱山の思い出」~
広島在住の土屋様より


少し前になりますが、広島にお住まいのある方より一通のメールをいただきました。それによりますと、その方のお知り合いの土屋様という98歳になる方が、以前土倉鉱山で働いておられ、『e-konの道をゆく』の「e-konの自由帳:わがふるさと土倉鉱山」の白川雅一氏の写真を大そう懐かしんでご覧になられているとのこと。またその方は当時のことを手記にされているということも書かれてありました。そこでそれを「ぜひ紹介させてください!」と無理を承知でお願いしたところ快諾いただき、今回のはこびとなりました。二つの悲しい災害のエピソードにふれられてあります。前者の詳しい年月日はわかりませんが、各地に甚大な被害を与えた後者の伊勢湾台風は1959年9月26日~27日に襲来しており、この土倉でも10名の犠牲者が出ているようです。以下、スーパー100歳を目指しておられるという広島在住の土屋様(98歳)の手記です。なお写真は自由帳で取材させていただきました白川雅一氏撮影のものです。




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土倉鉱山に勤務して選鉱場の建設にたづさわり、二十年の長きに渉り勤務した。新工場の試運転を目の前にして赤紙を頂き出征する。又二度に渉る大きな災害にも遭い、十一名の犠牲者を出した。その一つは冷水決の雪崩事故で、八名の犠牲者を出した。当時奥土倉は(事業所のあった処)雪も深く雪害の心配もあり、社宅の建設にも狭く、出口土倉に事業所を移転中であった。たまたま社宅が完成して坑内従業員が八名列をなし冷水決を通り新社宅に帰る途中の事故である。惨事である。八名の内一人は雪崩に対岸に飛ばされ、奇跡的に助かったが救出作業中に二次災害で一名の犠牲を出した。結局は八名の犠牲となる。救出に全員出動し懸命な作業にも及ばず終日の作業で二次災害の心配もあり中止となる。この事故で結果的に八名の犠牲者であった。

他の一つは伊勢湾台風に依る土砂の崩れで民家の埋没である。当日は朝から激しく降り河川は増水し社宅の護岸の石垣が危険と裏山の竹を切りたばねて川に流し石垣を守る。一寸一休みをする間も無く民家の山砂埋没の報告を受ける。家族三名が生き埋めである。全員夜を徹して発掘に懸命であったが救出は出来ず、翌日は村からの応援も得て発掘に努力するもその効も無く発掘は出来なかった。三日目は自衛隊の出動も頂き全員勇気百倍、懸命の努力もかなわず発掘は出来なかった。遺族に因果を含めて作業は打ち切った。名も無い小さな鉱山に自衛隊の出動を頂き、たのもしく勇気付けられ嬉しく思ったが、礼状の一つも出す事を忘れ、恥じるばかりである。その後西部開発も幻に終わり、山は閉山となる。私は閉山の一年前に退職し広島に帰郷する。閉山して一年、杉野小学校で土倉鉱山犠牲者慰霊祭が行われた。私達夫婦は広島から出席した。社長も病床から出席された。その席上先の土砂災害での三名の遺体の話は聞かなかった。

私は土倉に勤務して二十年、私の半生期を送る。雪崩で八名の犠牲者を出す。伊勢湾の嵐で三名の犠牲を出す。合計十一名の犠牲者に及ぶ。災害につけて何かと昔を思い出す。私の二十年の山の生活である。当初は別居生活であり一月十五日が休日で今日の週休二日制は夢のような話である。思えば私の人生の半生期である。新選鉱場を建設し、試運転を目前にして赤紙を頂き妻子を木ノ本に残して出征する。終戦三年の兵役を終えて帰還する。土倉に勤務して二つの大きな災害を体験する。何ともならないのが天災である。今にして思えばこの二つの災害は人智の及ばない天災であろう。人の命のはかなさを思うばかりである。犠牲者の霊の安らかに、と祈ってこの筆を置く。




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以上、土屋様の手記でした。現実を体験されたこの文面、とてもかなうものではありません。また一つひとつのことばに土屋様の思いが込められているように思います。土屋様ならびに今回ご紹介ただきましたS様には、心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。また白川雅一氏の心打たれる写真の素晴らしさを、改めて感じた次第でもあります。ありがとうございました。



上新町を襲った伊勢湾台風(1959年9月)。
撮影:白川雅一氏


伊勢湾台風時、社宅の畳を立てて氾濫した川の流れを変える。
撮影:白川雅一氏



http://www.geocities.jp/kondodoraibuiko_ne021/index.html
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【2006/11/26 00:00】 | 滋賀県山村・廃村・自然 | page top↑
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